如是我我聞

仏教書、哲学書、お聴聞の記録をつけています。

親鸞聖人の教えの場にいるわたしたちが聞く『教行信証』

響流書房の新刊。

 

親鸞『教行信証』を読む (響流選書)

親鸞『教行信証』を読む (響流選書)

  • 作者:石田 慶和
  • 出版社/メーカー: 響流書房
  • 発売日: 2020/02/14
  • メディア: Kindle版
 

 

 金子大榮師の岩波文庫版で超絶苦しんだ自分としては、なんと読みやすいのかと感動した。

『教行信証(正式名称 顯淨土眞實敎行證文類)』の原文は、非常に難解だった。金子師ですら、意味をはっきりできない旨書かれる註釈があった。書かれた当時の時代背景と、誤字の予測で読むしかないところもあるようだ。自分のほぼない知識で読んでも、原文読み下しを読むのが精一杯で、それを文意が通るところまで理解するのがやっとであった。

この本の素晴らしいところは、

・原文引用

・現代語直訳(に近い感じ)

・背景を理解した上での宗教的意義の考察

という三段階を繰り返しながら、教行信証の要点を最初から最後まで教巻から、読み進めていく流れ。

一度に読む原文の文量を小分けにしてあるので、初心者でも理解が進む。しかもその後に宗教的意義の考察を述べられるので、たんに文を理解しただけでなく、そこからの個人それぞれの深い受け取りに繋がっていくのだ。

親鸞聖人の漢文の解釈は法則から離れた独自のものが多いというのはよく知られたことである。その読み替えこそが、宗教書としての意義があると何度もおっしゃっている。宗教書として『教行信証』を受け取るということも感じることができる。

また西洋哲学、キリスト教などの例示も出てくる広い視野での考察は、仏教書という範囲にとどまらない新鮮さがある。著者の深い学識を感じる。

最初にしっかり読むといいと思ったのは、

 序ー『教行信証』を読むに当たって

ここで著者がどういうスタンスで『教行信証』と向き合っているのかを理解すべきだろう。ただ読むのではなく、現代に生きるわたしたちが問いを以て読むことと、親鸞聖人の教えの場にわたしたちがいるという心持ちを忘れないこと。

初心者の方は、

 第一講ー親鸞聖人の生涯

 第二講ー総序(わからなかったらGoogleで用語調べてもいいかも)

をしっかり読まれると、後が読みやすくなるかなと感じた。

自分はこの本で気になった『教行信証』の引用から、真宗聖典で前後を確認するということをしてみようと思う。

最後まで読んで思ったのは、著者の”我”がまったく感じられない、真摯な対峙の姿勢。隙のない真剣さを行間から感じる。これは宗教性を持った『教行信証』解説書であるだけではなく、この本自体が宗教書なのだなという感覚を覚えた。

 

◆挫折気味だった金子大榮師の『教行信証』

luhana-enigma.hatenablog.com

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 この本も読めます。