Kindle Unlimitedをちゃんと980円/月以上読まないといけないという脅迫観念により適当に読み始めた。
めちゃくちゃ面白い。哲学の本がこんなに「面白い」と思ったのは初めてだ。マスクしていてよかった。ニヤニヤしながら読んだ。
『読書について』 ショーペンハウアー (著), 鈴木 芳子 (翻訳)
・自分の頭で考える
いかに大量にかき集めても自分の頭で考えずに鵜呑みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識の法が、はるかに価値がある。
なんだかんだ言ってそんなに本読めてないし、読む速度が速くない自分にとっては励ましになる。思索したことは、単なる物知りではない。これはなんかわかる。知識ではなく知恵(智慧とはいわないさ)となるのはわかる。
権威による裏打ちを主張するような本じゃなくて、本当に自分自身のために考えたことを書いた本を薦めている。
・著述と文体について
新聞記者、流行作家はもちろんのこと、かつての師匠のフィヒテ、シェリング、勝手にライバル心持っていたヘーゲルに関してけちょんけちょんである。ドイツ語を曖昧な言語としてしか利用できない者に対しての痛烈な批判がものすごい勢いで書き上げられる。これ翻訳者に拍手だと思う。
すぐれた文体であるための第一規則、それだけでもう十分と言えそうな規則は、「主張すべきものがある」ことだ。
はやりの言い回しを使ったり、業界でもてはやされる表現をつかったり、「われわれは」と大きい主語で語ったり、「誘発する」というような責任所在曖昧な言い方をしたり、ショーペンハウアー先生のご指摘はわが身にもぐっさぐっさ来るのである。
余計なものはみな、マイナスにはたらく。「飾らず簡素」という掟は、崇高さとも調和するので、すべての芸術にあてはまる。
いやはや、全ページにハイライト(線)引きたい。ショーペンハウアー先生のこの著書自体がそれを体現しているわけである。全部にハイライトを引かねばならぬのだ。
ちなみにこの部分は、ドイツ語の基礎知識がある方はもっと楽しめると思う。
先生のご指摘ポイントは、この「簡素化」を間違って、正しく表現するために必要な単語をシラブル単位で切り捨てているというところにある。なので主張が曖昧になると。英語やフランス語もそうだけど、ドイツ語はいろんなニュアンスのシラブルが合わさってひとつの単語になっている。他の言語に比べたらまあまあ長いと思う(そんなしらないけど)。それを「わかりやすいように」シラブル少なめの単語を使うことで主張のない文体になっているとおっしゃっている。なるほどなるほど。自分も微妙なニュアンスにこだわっていきたいと思った。
当時の女性がこぞって「Frau」と呼ばれたがるという現象にも「元々の意味がわかってない!!!」と大層ご立腹なので、現代日本の年齢に関わらない「○○女子」という呼称や、みのもんたが高齢の女性に「お嬢さん」と呼びかけることもきっと許されないのだろうなと思った(余談)。
ここまでずっとなるほどなるほどと思って読んできたが、
比喩は認識の強力な推進力となる。
というところでちょっと立ち止まって考えた。自分は比喩をあんまり当てにしていない。というのが、最近法話で聞く譬えがピンとこないことが多いからだ。なんでも譬えで言ったらいいというものじゃないし個人のセンスが多分に関わるところだと思う。と思ったら、その後で「(比喩を見いだすのは)天賦の才だ」と書いてあって、なんだそうかと。。。
・読書について
本を読んでも、自分の血となり肉となることが出来るのは、反芻し、じっくり考えたことだけだ。
ショーペンハウアー先生は、何でも読むことを推奨しない。偉大な人物の作品を読めと薦めてくれる。人生が短いから。ああ、これは最近自分が本当に思っていることなんだ。時間がない。生活のために仕事をしているし、生きていくために必要な食事や睡眠。そうすると時間って本当に少ないと思う。最近、自分は100分de名著のシリーズを読むのをやめた。そこから新しい知識を得ることは時短になるけど、結局人の目を通していて、原作に向き合え切れてないのだ。それに気がついてやめた。興味があったら原典に当たるというのあるけど、自分は苦労しても原典に当たっていこうと思った。
「反復は勉学の母である」。重要な本はどれもみな、続けて二度読むべきだ。
ある意味、このブログを書くためにこの本は二度読んだ感じになるな。なかなか難しいけど、いい本は何度も読みたくなる。意識しなくてもそうなる。
最期に解説として翻訳者からショーペンハウアー先生の生涯について書いてある。これまた面白い。人の人生で面白いというのも失礼だけど、ものすごく人間的に知りたくなる人。本を読みながら、ショーペンハウアー先生についていろいろ調べてしまった。うっかり全集の価格までチェックしてしまった。あかん。なんとかKindleで行けるところまで読もう。
哲学は難しいと思っている方、ショーペンハウアー先生の叫びを是非聞いて欲しい。ぐっと自分に近い何かを感じると同時に、物事の本質を文章で突きつけられるダイナミックさに驚愕するだろう。