如是我我聞

仏教書、哲学書、お聴聞の記録をつけています。

『海うそ』/梨木香歩 小説にこれやられたらもう・・・

『海うそ』 梨木香歩 岩波現代文庫

 

 友だちのおすすめで読み出した。自分はほぼ現代小説は読まない。SF以外。

 自然、情景表現がずば抜けて素晴らしい。と思いながら風呂でKindle読んでいたのだが、さあ、リミットの15分来たからもう湯船から出るか・・・にさしかかった85%進捗からもう止まらなくなった。結果読み終わるまで40分湯船に。くしゃみでる。

 

 自分はここでは宗教・仏教・哲学の本のことしか書かないことに最近自分ルールを作っていたのだが、おもわずこちらに入れてしまった。文学作品だが、廃仏毀釈と修験道関係あるし・・・というどころの騒ぎじゃないくらいの人間が生きるということ、主人公を通してわたしとこの世界というものの関係をぐらっぐらにさせてくれるのだ。後半すごい。情景描写が美しいだけじゃなくてそれが自分の中に入ってきれいになったなにかを思い出させるような。自分がみているものはなんだろう。今自分はなにをしているんだろう。これがこの長さで凝縮されて人に伝えられるって文学、ことばの力の凄さにひれ伏すしかない。

 この作品から響いてくるのは、自分はヒューマニズムではなかったのだ。なにかなのだ。ここにいる自分だけが感じるなにかを。主人公を通して今自分がわかるなにかを呼び覚まされるような、そしてそれは素晴らしい読後感なのだった。

 ある意味すべての人におすすめ出来る。読んでみてあなたの読後感を感じて欲しい。