如是我我聞

仏教書、哲学書、お聴聞の記録をつけています。

『完全教祖マニュアル』/架神恭介, 辰巳一世 宗教サイドの人は一回これ読んでみたらいいかも

『完全教祖マニュアル (ちくま新書) Kindle版』架神恭介, 辰巳一世

 

 いつだったか日替わりセールかなんかで買った積本。

 素直に面白い。宗教を「教祖」が成功するためにどうすべきかという視点で、いわゆる伝統宗教と新興宗教を分析している。それによってなんだかわからないけど触らないでおこうみたいな「宗教」というものが、「あ、そうそう。みんな実はこう思ってるよね!」という感じで明らかになってくるという不思議。かつての新興宗教はいまの伝統仏教。ほんまそれ。伝統仏教の教祖の成功ポイント、もしくはあとあと効いてきたことにフォーカスする。

 全体的にシニカルな感じで面白いギリギリのラインを狙ってるが、その中に鋭い視点がかなりあって、おおお!!!!となる。

宗教で大切なことは、それが正しいかどうかではなく、人をハッピーに出来るかどうかです。神もこれと同じで、「いる」と仮定した場合に、そこからどんな素晴らしいことを得られるか。問題はそこなのです。

 そして信仰を持ってハッピーになった人は、「自分で考えることが減ってすごく楽だ」という風になる。価値感、判断の基軸が出来たから。それを拠り所にする。拠り所て大事だけど、自分で考えることがなくなって楽ってのはなあ。でもそれも本当だと思う。自分も真宗聞いていていやになるのが、この思考のパターンにはまっている人を見たとき。他人でも自分でもいろんな出来事をすぐ「阿弥陀のはたらき」に読み替える人。なんでもありがたい人。自分の辛いことが最終的によかったっていうのは勝手だけど、他人の大変な状況をみて、「教えていただいた」みたいなことを口にするのはどうなんだろうと思うことがある。なんでも教材なのか。そういうこともあると思うけど、外の人から見たらどうみえるかということもちょっと考えていいのかもしれない。自分はまだ真ん中にいると思っているが、微妙だな。

 新興宗教からさらに成功するには伝統仏教にかみついてなんぼとか、叩かれた方が伸びる、新興宗教は間違いなく叩かれるから大丈夫!(叩いてくれる特定の既存宗教がある)とかニヤっとするところも多くあっという間に読める。

 宗教の「側」に居る人はこれを一度読んでみたらどうだろうか。まあ、入りきってる人には通じないか・・・。全然宗教に興味ない人が読むより、宗教の中の人が読む方が断然面白いと思う。