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『法然対明恵 鎌倉仏教の宗教対決』/町田宗鳳

『法然対明恵』 町田 宗鳳 講談社選書メチエ

 

 これは法然と明恵の対比が素晴らしい本だった。法話では法然上人の一生に触れることはあるが、明恵についてここまで深く知った事はなかった。生まれた時代の差が40年。生まれは武士家系、親子の愛に恵まれない幼少期と似ているのに、明恵は釈尊を思慕していくような一種エキセントリックなのめり込み方をし、法然は念仏ひとつに向かっていく。法然の書いた『選択本願念仏集』に憤りを持って批判した『摧邪輪』ではあるが、

物事の「あるべきよう」を強く意識し、厳しく自らの身を律していった明恵と、念仏に導かれて自然態のうちに「戒体」に至りついた法然は、ここでも最終的に同じところにたどり着いたことになる。

明恵を「生の座標軸」、法然を「死の座乗軸」と表現されていたが、なにかしら基本線のようなものが相対していたのだと思うが、相似形になってもいるという感じがした。

島、生き物、仏像に対しても生きているかのように「相手」として対する明恵。今からするとエピソードを見る限り、大分めんどくさい人のような気がする。

いっぽう法然上人は、意外と建前を作って弾圧を躱しながらも、弟子たちが「表と裏があるから」と理解して対応していたということがすごい。といって策士的な要素が強いかというとそうでもない。信念は曲げない派。

おいたちから人間としてリアルなエピソードも交えたこの本は、自分としては法然上人を知りたくて読んだのだが、結果として明恵の魅力も充分知ることが出来た。

浄土宗、真宗の方は南無阿弥陀仏ひとつを見つけられた法然上人を知るのに、そして『摧邪輪』を書いたお陰で親鸞聖人が『教行信証』を残してくださったとも言われている明恵についても知るためにいい。そして、明恵の正論といえる『選択本願念仏集』反論の中身、いわずにおれなかったところも味わうことが出来た。実にいい本だった。

 

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