『イエスの生涯』遠藤周作 新潮文庫
最初に新旧訳聖書を読んだのは小学校3年生の時だった。
そのときに初めて神さまと宗教というものがはっきりわかった。仏壇になんまんだぶといっているのも宗教なんだとわかった。でも神様と仏さまって国が違うから違うの???という感じだったことを思い出した。とりあえず、魚とパンがみんなに行き渡る奇跡のシーンは、「神様信じたらこんなことが起こるの???」という衝撃だった。ちなみに小学校の図書館で借りた。
映画の『パッション』も見たし、キリスト教に関わる本も読んだが、イエスの生涯として読むのは久しぶりな気がする。そしてこれはあくまで遠藤氏が聖書に向き合われた内容だと言うことも理解している。
イエスという人間、それを取り巻く人々と当時の社会情勢、状況、そして現地に赴かれた印象など、作家らしい感覚で綴られている。
これが正しいイエスの生涯だとは思わないが、信仰を持って向き合われた方の読み方の思いがけないところでの深さにハッとさせられる。
自分は浄土真宗の教えを聞いている身ではあるが、イエスがなぜ神の愛を証すために十字架にかかったのか、その気持ちを思うと苦しくなる。そしてどう見てもポンコツだった弟子たちがなぜ使徒といわれるまでの活動をイエスの「復活」後にしていくことになったのか。独自視点は推測であることは承知の上でも頷けるものだった。
イエスの周りのひとたちは、分別いっぱいの幸せをもとめていて、それを静かにそういうものだと悲しみながらも受け入れている姿が浮き上がる。愛って暖かい感じがするけど、それを伝えるということは難しいものだな。ことばにするとイメージだけで思ってしまうけれど。
とりあえず、遠藤周作のキリスト教に関する三部作の一冊目を読了。
◆遠藤周作の作品レビュー