『日本人と地獄』石田瑞麿 講談社学術文庫
これはぶっちゃけ読みにくい。地獄に関する文献を集めた感じ。多分そういう地獄辞典みたいなのが今までなかったんじゃないかな。地獄に関するものを全部載せましたという感じがある。そして原文が掲載されていて、訳がなかったり意訳だったりするので原文読みこなす技量がないとちょっときつい。
それでも地獄に墜ちることを恐れてきた人々が地獄になにを想像していたのかということがわかり、ところどころ自分が知っていることとつながって、ああ、あれはそういうことか思い至ることがあったのでちょっとメモしておく。
親の仇を討たなければ、来世は血国に墜ちて獄卒の責め苦を受けるという考え方がここにある。
鎌倉時代からの御伽草子にみられる考え方のようだ。これを読んで、父である漆間時国に敵討ちをするなといわれた法然上人のこころを思うとその父の言葉の重みというのが一層感じられる。そんな簡単にいえる言葉じゃないな。
(立山地獄について)この地獄が、仏・菩薩の化作したものだという理解である。つまり信仰の対象として、いわば阿弥陀仏信仰を助成する地獄という理念が強く働いていることが理解される。
なんというか、真宗ではないけれどこういう考えがあるということ。ただ人を脅かすというよりは、未知のものへの畏れと敬意というものが仏・菩薩の化作であると理解しているところにあると感じる。すくなくとも地獄に墜ちたくないから阿弥陀仏を信仰するというのでは違うなあと思うのだ。
すごく読みにくいけど、墜獄したひと列伝という感じのところがあるので、そこに出てくる醍醐天皇、平将門、紫式部などは興味深かった。地獄の冥官だという小野篁の話を読むと、鎌倉時代の夢告文化を思い出してなるほどなるほどという感じだ。そういう時代だったんだなあ。
古文に自信のある方は読まれてもいいかと思うという本。
◆当時を生きる人の考えとしてこちらも関連していると思う