如是我我聞

仏教書、哲学書、お聴聞の記録をつけています。

自分という存在を科学的に『からだ・こころ・生命』木村敏

『からだ・こころ・生命』木村敏 講談社学術文庫

 著者は精神病理学専門の方。タイトルの内容をこういう方が書かれるのか!という驚き。

 いのちというのはなんだろうかというのが、宗教では問題になることがある。この言葉をいうときに、それぞれの人の定義が全然違っていると感じることがあり、そもそもどういうことなんだろうという疑問があり読んでみた。

 このふわっとしたタイトルのからだ・こころ・いのちについて、科学的な視点にもかかわらず普通のなんも考えてない人間がおおおおお!と唸るような表現で解説してくれる。

 これは境界が接するところに自分がいる。というところに驚き。まさに仏教の分別。そして存在しているいのちは衆生であり縁起の話なのである。

 なんというか引用全部したくなるので是非読んでみて欲しい。

 自分が宗教に少なからず求めている「自分とはなんなんだろう」という疑問に近づくヒントをくれる。そして自分と他者とのあり方について気づいたら、ちょっといままでとものの見方が変わったように思う。ずっとこの視座を保てるかは別として、読書で得られる経験としては得がたいものだと思う。

 講談社学術文庫にしてはページ数が少なく、あっという間に読み終えられる。