『時間と自己』木村敏 中公新書
タイトルを見て思い描いていた内容と違っていた。確かに精神病理を通して時間を考えているのだ。すごい。こんなことを考えている人間がいるんだ・・・というのが率直な感想。
精神分裂病(現在の統合失調症)、鬱病、双極性障害の患者から見た世界について精緻な表現で伝えてくれる。そこに見えてくる時間と自己の認識の関係。
統合失調症に関しては、親からの影響が少なからずあるというところでハッとした。
病気というのは、社会の中で大多数よりちょっと範囲からはみ出したときに疾患として名前がつけられただけで、誰にもあり得ることなのだ。本の中でも、病名がついてない人でもどれかの「傾向」があるとのこと。自分はどっちかというと統合失調症寄りかもしれないなあと感じる。遺伝子が関係する病気というのもあるだろうし、後天的な経験によるものもあるだろう。いずれにせよ、こういうものを患うということは誰にでもあることなんだなと改めて思った。
自分は双極性障害、統合失調症を抱えた人と接していた。ある意味現在進行形もある。
鉄格子のある病院で、その人の見ている世界の話しを聴いた。自分の見ているものと違うのだなと。そのあと、どうしてこうなってしまったんだと歎く周囲の人の言葉をきく。なぜだろう。自分は鉄格子のある病院できいた世界の話しの方が、ほんととじゃない?それって人間の本当の姿を見ているんじゃないか?と思ってしまった。
それほど自分の見ている世界は自分価値感でしか成立していないのだなと思うのだ。普通ってなんだよ、まともってなんだよ、と。
ハイデガー読んでいるとこの本はよりずんっと来ると思う。
科学的な普通の文章を読んでいるのに自分っていったいなんやろうと揺さぶられる一冊。
◆木村敏氏の本