『生まれてきてよかったですかー同行様たちへの書信』 大石法夫著 樹心社
※絶版です
絶版書であるが、『法藏魂を呼び覚まされて』(宮岳文隆著)を読んだ時にこの本が出てきたので、お持ちの方のお借りして読ませていただいた。
ひとむかし前の話かもしれない。第二次世界大戦で回天の人間魚雷になる舞台にいた大石師が藤解師という師匠に出遇い仏門に入っていく。そしてご同行(真宗をともに聞いていく人々)に送られた手紙をまとめた本である。ある意味、「わたし」に届けられたものとして読むことができる。
正直藤解師との師弟関係については時代が違うせいか、本当に理解できるかというとそうでもないと思う。しかし一ついえるのは、そういう師弟の形を通して仏教に向き合われた人がここにいるということである。
手紙の中身は、ご自身や門徒さん、ご同行の身に起こったこと。誰にでも起こることではないかもしれないけど、ああ、そういうこともあるかもしれないという想像力の延長線上にある生きていく、生活していくという土壌に立ったもの。そこからの大石師の受け取りが綴られている。
生活、社会の中で生きていくという誰もが今行っていることに基づいているので、その話から自分の中の別の経験が呼び起こされて思うところがどんどん出てくる。そういう本である。本の中身の理解だけではなく、いろいろなことが自分の中で展開していく。不思議な感じがする。そこから聞こえる南無阿弥陀仏。
特に最後の第十九信は、戦時中になくなった同期の方、遺族の方とのお話であり、還相回向について考えさせられた。亡くなった方が自分にはたらきかけてくれているからありがたいというのでは言葉がたりない。自分という世界の中で、死という事実とそこから派生する現実を受け止めるときに、自分の都合でしか捉えられない。そういう自分だと思い知る。だからありがとう。そう知らされたんだ。ありがとう。
◆大石師の出てくる宮岳文隆師の本はこちら