『中学生の君におくる哲学』斎藤慶典 講談社
哲学系のお薦め本にあったので読んでみた。
著者が慶応中学校の校長時代、生徒に話された内容。ふーんと思っていたのだけど、これがまた自分が遠くに忘れ去ってしまった心の奥底にじんわり伝わってくるものがあってすごくいい。お前、まだ忘れてないだろ、まだあるんだろうと言われているかのように新鮮に読むことが出来る。
言葉の本当の意味で自由であるためにはほかの誰からも、ほかの何ものからも命じられたわけではないことを、自分自身の力で実現したのでなければなりません。
シンプルな言葉が刺さる。
人が何か困っていたら、助けを必要としていたら、その困難を取り除き、援助することであって、それに思いが込められてるか、優しさが伴っているかではない。
こういうところ、仏道を求めるものの社会貢献のこととかいうことについて考えさせられる。人間だからそうするだけで仏道は関係ないのじゃないかな。
リルケのことばで「思いがけない邂逅、虫が知らせた別離」というのを取り上げている。そう。これを聞いている中学生はまだ実感がないかもしれないが、人間はこれを繰り返していくんだ。
最後にひいたニーチェの言葉がいい。
世界には、君以外には歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行着くのかと問うてはならない。ひたすら歩め。
でも、問わずにいられないんだよ。
読み終わったら、ちょっと自分の心の底にあったものを確認できる感じがする。大人にこそお薦めかも。
◆斎藤慶典氏の本