『唯識 これだけは知りたい』加藤朝胤監修 船山徹 石垣明貴杞
とてもいい本だと思う。
インド、インドから中国へ、中国から日本へ、唯識の基本用語と章立てされていて、そんなに唯識を知らない人でも歴史から、しかも理解しやすい内容で読み進めることが出来る。無著、世親兄弟のところは面白かった!
自分としては、ディグナーガが自分の派内でのみ理解される用語で教えを現わすのでなく、文字が読めれば理解できるようにしたというのが、そういう転換を行っていく人がいるんだなあと。そういうことがなければ今自分の元に仏教が伝わっていないかも知れないとも思う。
またこの本は、法相宗の叫びでもあるのだ。
…しかし、日本の法相宗や唯識思想はまだ途絶えたわけではありません。我々の身近には薬師寺や興福寺、そして法相宗の僧侶も存在しているのです。静かな朝もやの中、勤行で『唯識三十頌』を読誦する僧侶の声を聞き、佛様に向かうその姿を目にしながら、自身の人生と、真実の幸福について、ゆったりと考える時間を持つことができるのです。
真宗から唯識を見るときに、どうしても考え方という風に捉えてしまうのだが、そこには今も教えに向き合う人がいるんだということを改めて感じた。そしてその修行というか行のすごさも初めて知った・・・。
なぜかこの本に合わせて芸術家・作家のみなさんに仏教をテーマにした作品を依頼されていてそれが作者の一言と共に掲載されている。装丁もとても青がすてきだ。
ざっくり唯識がなにか知ってる人が面白く読めるのではないかという一冊。