如是我我聞

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『ひとはなぜ戦争をするのか 』アインシュタイン&フロイト

『ひとはなぜ戦争をするのか 』講談社学術文庫

アルバート・アインシュタイン (著), ジグムント・フロイト (著), 養老孟司 (著), 斎藤環 (著), 浅見昇吾 (翻訳) 

当時ユダヤ人として亡命していたアインシュタインが指名してフロイトと行った対話書簡。

アインシュタインという人間が実感として感じることをフロイトに投げかけ、フロイトが自らの学術的見地に自分の視点をプラスして返しているという感じ。

アインシュタインは、権力欲と本能的な人間の破壊欲について語る。フロイトもその「死の衝動」について語る。フロイトは文化の発展によって戦争の終焉に向けて歩み出すことが出来ると締めくくっている。

なるほど。文化によりすべての人間が平和を望む様になるということか。そうだなとも思うし、理想だなあと思う。

 

最近伊藤計劃の『虐殺器官』というSFを読んだ。自分の文化(護りたい人)を護るために異文化の地で虐殺を行いテロを抑制しているという話だった。人間の根源的な願いってなんだろう。本当に「全世界」の平和を求めているのか、「わたしの世界」の平和を求めているのか。この小説のことも考えて、平和を求めながら戦争をする現代のわれわれ人間について考えさせられた。「わたしの世界」の平和になった瞬間にその他への破壊が許容される選択肢が出てきてしまうのだよね…。自分はなんとなくいま「全世界」の平和をみんな語っているようでいて、じつは「わたしの世界」の平和しかみんな見えてないのじゃないかなと感じる。まだ文化が未成熟なのか。