『善の根拠』 南直哉 講談社現代新書
2冊ほど読んだ南師の本が面白かったので読んでみた。
善悪というのが一体どういう構造で起こるのかというのを実験的に解説されているけれど、すごい。
冒頭の序とⅠがすごい。
その後、戒律(十重禁戒)を例にして解説をされていくのだが、自分はわが身に引き当てたことをいろいろ想像してしまって重い。さーっと読める人もいるかもしれないが、自分の生活の現状と合わせて見たら考えさせられる。
そこが終わって後半が対談(っていうか相手誰?)になるのだけど、これがさらに面白い。前半での解説の意味が生きて届いてくる感じ。善悪の根拠について死刑制度にまで発展する。不貪淫についおおおそこにくるのかというところ。面白い。自殺についてのところもこういう整理された文章をみると自分も考えやすいなと思った。
あとがきでこの不可解な構成の本の成立について明かされている。まさに本という体裁にされるための苦心がうかがわれた。
自分はこの本を読んで、「自灯明法灯明」について再考させられた。自己がどうして自己たり得ているのか。自分はだれかに「課せられている」。ひとつひとつ自分に当てはめて考える。自分はひとりで自分でいられないのだなとつくづく思い、また縁起によってなりたついまこのひとときも変わりゆくものなのだと思ってこれを書いている。
自分が南師の著作が好きなのは、本質のところをきちんとおっしゃっているところ。温かく優しい世界でない仏教をダイレクトに伝えている。背筋が伸びる。禅やってないけど。
◆友だちがいなさそうな二人の対談
◆この本の南師のところはよかった。