如是我我聞

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『差別の超克 原始仏教と法華経の人間観 』/植木雅俊

『差別の超克 原始仏教と法華経の人間観 』 植木雅俊 講談社学術文庫

 

 

 これはどんな方も一読の価値あり!

 今まで植木先生の『法華経』『維摩経』を読んできたが、先生がサンスクリットで読んでこられたことはこういうことだったのか、なんとすごい研究なんだと驚いた。

 仏教とジェンダー、まあでも女性差別だけじゃなくて差別のことだよな。このテーマでお茶の水女子大学で学位を取られた6人目の男性というのも驚き。

 どこまでも原典を読んでいく。これって単語を右から左に翻訳していくということではなくて、自分の五感のすべてを使って向き合っていくということだと思わされた。なので、先輩諸氏の学説に対しても堂々と反論されている。すごい。こういう世界があるんだ。

 いままで植木先生の本を読んでいて感じていたことが明確に理解できた。舎利弗をやり込める天女(『維摩経』)、縁覚と声聞にめちゃくちゃやさしい『法華経』、龍女の変成男子の意味。そうだったのか。

 

 最後にこれは「原始仏教」においての話だとおっしゃる。そう。たしかに。現在存在する仏教各宗派における差別の認識の問題(真宗大谷派は部落差別中心のようだけど)とは別の事だ。親鸞聖人のご解釈、日本で広まった際どうだったかということ、そして何より、「今」苦しんでいる人に対してどうするかを考える必要があるだろう。過去どうだったかより。

「善男子・善女人」、常不軽菩薩の話もとてもよかった。

常不軽菩薩はちょっと深く考えたい。自分には到底出来ない(と比較して考えるのがそもそも間違いなんだろうけど)ところが大乗仏教の根幹の様な気がして。

 

 全体を通して読むと重複があるなと感じる。ただし、言語表現としてデリケートなところを伝えているので何度も言い換えるというのは必要だなとも思う。言葉のセンスって、それぞれの人が違うと思うのだけど、そういう受け取りの差異を極力発生させないように伝えようとされているのがわかる。いいなあ。本当に読んでてそういうところがいい。

 

 要旨を掴みたいだけなら第十章読むのでもいいのかもしれないが、是非最初からじっくり読んで欲しい。

 これを読んで『テーリー・ガーター』を読まないと!と思った。

 

◆植木師の著書

luhana-enigma.hatenablog.com

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