素晴らしい。素晴らしい読後感。法話ベースの仏教書でここまでわかりやすいことに驚愕。俳人でもいらっしゃるという事で、言葉選びが秀逸。本当に基本の仏教用語がうっすらわかっていれば、前提知識のない人でもきちんと読み終えることができる。
名号の重みについてはこの本の説明が一番わかりやすかった。また、別の仏教書で見かけて東本願寺のHPを見てもわかりにくかった往相回向・還相回向もすっとはいってきた。
仏教書を読んでみたいという人には最初の頃に手に取ってもらいたい本である。
この本に限っては、人としての経験からの訴えてくる法話ではなくて、法をすらすらと流し込んでくるような法話だ。
曇鸞讃の凡夫の心を氷に、阿弥陀様の大悲の心を水や海水に例えたものを解説されているのだが、表現がとても美しく、仏教用語に頼らなくても人の心に温かく伝わるお話である。実際の法話で聴いてみたかったと思う。
キリスト教、西洋哲学との対比も交えているので、門徒以外の方も、興味を持って読める内容になっている。著者の広く深い知識が推しはかられる。
宗教心という事の定義についても触れられている。これは意外と浄土真宗の法話ベースの話の中では出てこない。ズバリ宗教心という言葉では表現されることはあまりないような気がする。
個人的には、名号の重要性について話されているところは、いつも心にとどめておきたい部分である。
仏教に関する本を初めて読まれる方にも、宗教としての仏教が素直に伝わる内容であると思う。
いろいろお聴聞に行っているが、根本的に、『信仰』ということに触れる僧侶の方が少ないように思う。阿弥陀仏の救いをたのんで生きるということは『信仰』であり、『宗教』であるはずなのに、そうは言わない。
大峯師の法話は、そこを明快な言語で透明に力強く阿弥陀仏の本願、名号についてのお話がされていると感じる。大峯氏の言葉に魅了されてた一人としては、これから著書をすべて読んでみようと思う。