如是我我聞

仏教書、哲学書、お聴聞の記録をつけています。

『科学するブッダ 犀の角たち』/佐々木閑 大乗仏教は嫌いなのね

『科学するブッダ 犀の角たち』 佐々木閑 角川ソフィア文庫

 自分は佐々木先生のYouTubeを欠かさず見ている。最初から。二日に一回のペースでUPされる動画を欠かさず見ている。

 この本もその動画の中で紹介されていた。だから積本に入っていたと思う。

 衝撃的だった。いい感じで読んでいた本が、最後30分で急降下、奈落の底に落とされた感じである。ショックだ。

 科学と仏教というテーマで、物理学、進化論、数学ときていわゆる佐々木師の「釈迦の仏教」、そして大乗という構成になっている。

 自分は科学の分野に明るくないので前半はぶっちゃけ読みながらGoogleさんのお世話になった。でもまあ、科学の分野はWikiに書いてあることレベルかなあと思われる。ただ、こういう風に分野別にパラダイムシフトが起こったところに焦点を当てて「科学の人間化」について書かれているところはなるほどなあと思って読んでいた。数学のところで、ピタゴラス学派が無理数の存在をもらした人を水に沈めて溺死させるリンチをしたとか某TV番組の『ピタゴラスイッチ』がスタイリッシュでかわいいなんてもう思えない・・・。虚数を認めるのに300年かかったとかも「へぇー!」であった。

 佐々木師が大好きな「釈迦の仏教」のところは去年YouTubeで聞いた辺りのことが出てきていたかなと思う。自分も本で知る知識ばかりなのでそんなもんだなと思って読む。

 でもなんというか、前段出てきていた科学と仏教がつながりそうでつながらない。たしかに科学は人間の側に降りてきたし、脳科学まで交えたら新しい視点もあると思うけど、じゃあ仏教でどうなん??っていったらここ読んでもピンとこない。続きは未来にあるみたいな感じになってる気がする。これからが面白いんだ!みたいな。

 まあ、それはいい。第五章 そして大乗 に入って、もう無理

 以前も佐々木師の本を読んで思っていたのだけど、たまたま佐々木師信奉者の研究者とお話しする機会があり、「佐々木師は大乗仏教に愛がないのではないか」という疑問をぶつけたことがあるのだが、今回は確信に変わった・・・。

 自分は仏教学系のいいなと思う本をいくつか読んだことあるけど、こういう風に「釈迦の仏教」が正しくてあとは十把一絡げみたいに書かれているのはショックすぎる。そういう風に思っていてもいいのだけど、研究者としてもっと客観的な書方にしてほしい。あまりに正か邪かみたいな意味合いが出過ぎ。ブッダの真の言葉の解明もすごく大事だと思う。でも、いまこれを信仰としている人たちへの配慮がなさすぎというか、この大乗仏教を繋いできた人たち、歴史への敬意みたいなものが感じられない・・・。

 一部文章を書き出そうかと思ったけど、それだけが一人歩きするのもよくないから要約にしておくが、「釈迦の仏教」とは異なり阿弥陀仏を外部に超越的存在としてる、そしてその超越的存在と直接交流するのが大乗仏教であり、釈尊の直説でなくて問題がない、経典の作者が釈尊かどうか二の次・・・みたいな記述がある。うーん。残念すぎる。自分が聞いている真宗はそんなことない。仏説にこだわらないって、そういうことじゃない。すくいについて真剣に向き合ってきたひとの歴史ではないか。自分は『バウッダ』という本を読んでそれを強く感じた。『バウッダ』も初期仏教からの仏教学の本だ。

 ああ、本当にがっかりしている。最後の方で、科学者を招いてのディスカッションに関してこう書かれている。

・・・仏教の立場からの見方とすり合わせると、これが実にスムーズに進むので驚いた。特に釈尊時代の仏教との整合性は顕著であった。この時、仏教と科学は想像以上に結びつきが深いのではないかと気づいた。

うーん。「釈迦の仏教」の時代が顕著なのは、そこがご専門だからじゃないかな・・・。大乗のところのご理解は、その大乗の中にいる人間からしたら???な記述もあるのでこの結論はないんじゃないかな。この仏教だとおっしゃるものの見方も佐々木師の見方でしかないなというのが感想。と思うと、科学のところも専門外なわけで(例え理系学部だったとしても)、どこまでこの本を信用していいのかわからない。一個人の見方でしかないな。これがタレントが書いたのだったら別にいいけど、学者が分野外に手を出すのはどうなんかなということを思う。うーん。読んだこと一回リセットかな。

 とりあえず、大乗仏教の人にはおすすめしない。「こういう見方をされる方がいらっしゃるということに新しい気づきをいただきました!ありがたい!」みたいなことをいえる人だったら読んでもいいと思う。自分は無理だった。

 最後にもう一回言うけど、佐々木師のYouTube、初回から欠かさず見ていた。

 

◆仏教学ならこれを読んでください

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◆佐々木師の著書レビュー

 

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